ものづくりの「美・用・強」


天皇陛下の愛車は1991年式の2代目ホンダ・インテグラ(MT車)だそうです。
特別なお立場でありながら、新しいもの、高級なものではなく、ごく一般車を大切に手入れしながら乗り続けておられ、当時のホンダの社員、工員もきっと誇らしく思っているはずです。

我々、作り手にとってうれしいことは
「自分の作ったものを大切にしてもらえること」 これに尽きます。
使い手が一生大切に、さらには子、孫の代まで大切に使ってもらう。
作り手にとってこれほどうれしいことはないのです。

もちろん作り手は、「末永く大切にしていただくため」に、様々な研究と技術の研鑽を積み重ねます。
① ザインや仕上げの美しさ
② 使いやすさ
③ 長持ちする強度

この3つをひとまとめにした「美・用・強」という言葉はものづくりを語るうえで非常に重要なキーワードと言えます。

たとえば、見た目の美しさを重視するあまり、強度や機能性が損なわれることはよくあります。また、強度を保つために野暮ったいデザインになってしまうこともあります。
この3が絶妙のバランスで成り立った時に、ほんとうに「いいもの」ができると思うのです。

ただし、ひとつご理解いただきたいのは、この要素のどれかが欠けているからといって必ずしもそれが「悪いもの」という分けではありません。あくまで「美・用・強」は要素、性質にすぎません。
例えば絵画やオブジェのように美に特化したもの、ネジ釘のように強に特化したもの。
それぞれに求められた性質を存分に生かし、用を成しています。
工芸においては、美・用・強の高い次元におけるバランスがその魅力を左右するのです。